[TBL]将棋対局 / (1) ゲーム紹介 パッケージ表面[TBL]将棋対局 / (1) ゲーム紹介 タイトル画面

今でこそ多種多様あるコンピュータ将棋。PC-6001用としてはこれの他に「飛車」(キャリーラボ)の2本が市販ソフトとして発売されています。雑誌「I/O」に掲載された物を市販ソフト化した物です。

機種: PC-6001(32K) / mkII / mkIISR / PC-6601 / SR
開発: 黒崎 隆
販売: 株式会社コムパック
発売年: 1983年(取扱説明書の奥付には「昭和58年9月25日 初版発行」と記載)
定価: テープ版 3,000円
メディア: カセットテープ 1本組
付属品: 取扱説明書


 コンピュータが思考して駒を動かす、いわゆるコンピュータと対戦するパソコン上で動く将棋ゲームとしては一番最初の物であるようです。工学社のパソコン雑誌「I/O」の1983年9月号にこのゲームの記事・プログラムソースが掲載されています。開発したのは黒崎 隆さんという方で、I/Oの記事を見た感じだとたぶん相当将棋をやっている方なのでは?という印象を受けました。

 同じ「I/O」の1982年5月号に「マイコン将棋盤」(作者:大角宗久さん)というのが載っており、そちらは人間対人間が画面を見て対局するという類のプログラムで、これに刺激を受けて開発された物と思われます。ちなみに、「I/O」別冊の「マイコンゲームの本 4」には「高速将棋盤」というのが掲載されているようです。

 今日の将棋ソフトとなると、盤上のカーソルをマウスやコントローラーで動かして動かす駒を決定し、更に動かす場所を決定するというのが普通のインターフェイスかと思われますが、この「将棋対局」は盤上を座標で表し、「動かす駒の座標+どこへ動かすかの座標」を入力するというのが基本になっています。また、敵陣に入った時に成る場合(「歩」→「と金」など)は、接尾語として「n」を付けたり、持ち駒を打つ場合は「各駒を示す略称+座標」と入力して駒を打つという形になっています。
 例を上げてみると…
 (1) 7七の歩を7六に移動させる(棋譜では 7六歩 ) → 7776
 (2) 2八の飛車を2五に移動させる(棋譜では 2五飛 ) → 2825
 (3) 5五にいる角が8ニにいる飛車を取って、そのまま成る(棋譜では 8ニ角成 ) → 5582n
 (4) 3四に持ち駒の桂馬を打つ(棋譜では 3四桂打 ) → ke34 ※ ke は桂馬を示す略称

 などとなります。駒を移動させるのに、盤上の座標を見ていちいち入力していかなければならないので、面倒な印象を受けます。

 開発は「EXAS BASIC コンパイラ」を利用しており実行速度は早いです。一番の問題となるコンピューターの思考ルーチンは「I/O」の記事を読むと、一手先しか読んでいないようです。記事から引用すると「局面の評価の方法は、自分の駒の安定度と自分の玉(編注:駒の間違い?)のまわりにどれだけ敵の駒が効いているかということで決定しています。」と書いてあります。つまり、盤上の駒のそれぞれの「安定度」というものを計算し、それらを評価して「次の一手」を探し出すという手順であるようです。その方法のせいなのか、特に終盤になると「なぜその駒を取りに行く?」と疑問の付く手を指す事が多くなる傾向にあります。

 筆者本人は将棋は少し分かるのですが、数回対局してみた限り「将棋対局」はそんなに強くありません。定跡を知っていれば大体勝てると思います。駒の動かし方を覚えた小学生が相手がするのにちょうどいいのかな?と感じました。まあやる小学生はいないと思いますが(笑)

 コンピュータ将棋自体は1970年代から研究されているようですが、この記事を書いている2013年1月26日現在、2010年には清水市代女流棋士を破った「あから2010」や、2012年には米長邦雄永世棋聖(故人)を破った「ボンクラーズ」といったソフトが現れ、「将棋対局」から30年経った現在の理論や技術の向上は凄まじいものがあると言えます。

 筆者は小学校4年生の頃に将棋を覚えましたが、当時コンピュータで将棋を指すという事に興味が無く、Windowsの時代になって「AI将棋」を暇つぶしにする程度で、このソフトも入手したのは最近です。「飛車」もこの記事執筆の時点では未入手。
 それとは別に余談ですが「将棋対局」に関してウェブを検索している時に見つけた情報で、雑誌「月刊マイコン」1985年5月号に「指将棋プログラム・レート1205」(PC-6001mkII以降用)という将棋プログラムの記事が載っています。作者及び記事執筆は笠本正典さんで、コンピュータの思考方法―特に評価関数や駒の価値に関していろいろと書かれています。笠本氏はこの界隈では有名な方のようで、ラッセル社「PCマガジン」1989年5月号にも記事があるようです。

 ゲーム画面 

[TBL]将棋対局 / (1) ゲーム紹介 ゲーム開始対局開始。先手は人間。
[TBL]将棋対局 / (1) ゲーム紹介 ゲーム画面1先手が棒銀を目指している一方で、後手のコンピュータ側が角を取って成る。
[TBL]将棋対局 / (1) ゲーム紹介 ゲーム画面2相手の飛車を取って、相手陣地を攻めている場面。
[TBL]将棋対局 / (1) ゲーム紹介 ゲーム画面3先手2四銀打で詰み。
[TBL]将棋対局 / (1) ゲーム紹介 ゲーム終了ゲーム終了。75手で勝ち。


(2)に続く。

ブログを書くにあたって、各雑誌の記事を見せていただいた しおんパパさん・のりさん ありがとうございました!

2013/02/04 00:44
コメントでご指摘いただいた部分を訂正しました。ありがとうございます。